昨年より当地の新聞紙面や政府の発表等で頻繁に取りに上げられており、同国が「中所得国の罠」から脱却を図る為の中長期的な経済成長戦略である「タイランド4.0」の中核を成す、チャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーンの3県を投資優遇地とした経済特区に選定したEEC(東部経済回廊)エリアにおける筆者が目にしてきた30年の歩みを紹介させていただきます。筆者がアドバイザーを務めるWHA INDUSTRIAL DEVELOPMENT PUBLIC CO.,LTD.(旧社名HEMARAJ LAND &DEVELOPMENT PUBLIC CO.,LTD.)は1988年に設立しチョンブリ県に最初の工業団地を開発致しました。現在ではチョンブリ、ラヨーン県内に9ヶ所の工業団地の開発を行っています。総開発面積は7,770ヘクタールでこの数字は東京23区の大田区と目黒区を足した面積よりも大きな規模の開発を行っております。入居企業数は約750社、内40%が日系企業です。
 
 同地区での工業団地の開発は同国が1982~86年に行った第5次国家開発計画で着手された「東部臨海開発計画」というチョンブリ、チャチュンサオ、ラヨーンの3県の東部臨海地域と呼ばれるエリアの開発プロジェクトがきっかけとなりました。この東部臨海開発プロジェクトはシャム湾で開発された天然ガスを利用した、重化学工業や当時新設予定だったレムチャバン深海港周辺に立地する輸出指向型産業の2つをベースにバンコクの東南に位置する東部臨海地域の開発を進めてバンコク首都圏への産業の一極集中を緩和し、国の新たな産業基盤を確立する事を目的としたプロジェクトで、日本からの円借款の支援もあり産業に必要な社会インフラも整備されてきました。その後、90年代に入りBOI(タイ投資委員会)が中心となり積極的な自動車産業の誘致活動を行った結果、日本のみならず欧米の自動車メーカー、自動車部品メーカーが多数進出して東部臨海地域は「東洋のデトロイト」の呼び名で広く世界に知れ渡りました。実際弊社の全体の工業団地に入居する企業の業種の割合では自動車産業が4割弱ですが、同地域で開発した弊社最大の工業団地である「イースタン・シーボード工業団地」は入居企業数の6割弱が自動車関連産業となります。その中でも同地域は圧倒的に日系企業の進出が多かった為、静かな漁村だったチョンブリ県のシラチャ―には多くの日本人が居住した事に伴い日本食レストランが立ち並び、日本人学校も開校する等タイ国内ではバンコクに次ぐ日本人街が形成され現在に至っております。

「東部臨海開発計画」から約30年を経た2016年6月にタイ国家経済社会開発庁(NESDB)の提案によりEEC(東部経済回廊)政策へと変貌を遂げました。この政策は同地域に電気自動車(EV)やハイブリッド車、ハイテク産業の投資促進を行いながら陸海空インフラ等の一体的な開発を行う計画で、今年に入りタイ政府は今後5年間で、同地域に1兆6500億バーツの投資を官民で行うと発表すると共に同地区の推奨する産業の投資を行う企業についてはタイ投資委員会(BOI)の基本恩典にEECの追加恩典を加え、最大13(15)年間の法人税免除や個人所得税やビザに関する様々な優遇措置を設けています。

 2017年中旬よりタイ政府もBOIが中心となり、日本を含めた世界各国でEEC政策の説明会や企業誘致の活動を活発に行っており、昨年は海外から多くの視察団が弊社工業団地を含む同地域の主要な社会インフラを訪問、投資に関する調査等を行っておりますが、弊社工業団地の統計で見ますと2018年は日系企業より中国、台湾からの企業の新規投資が目立ち、この動きは米・中の「貿易戦争」の影響もあり2019年も続くと予想されています。

 最後に筆者の個人的な希望ですが、30年以上の長きに渡り同地域に進出して様々な産業クラスターが形成されている日系企業の間でも従来の生産に加え、同国の更なる発展の為、政府の推奨するハイテク産業等を含む「Thailand4.0の10の重点産業」の分野での新規投資の動きが出てくる事を期待しております。

WHA INDUSTRIAL DEVELOPMENT PUBLIC CO.,LTD. 
日系企業マーケティングアドバイザー
湯浅 謙一
ken@wha-industrialestate.com
工業団地及び賃貸工場・物流倉庫の開発